
日本のトレイルに「本当に必要なスペック」とは?
マウンテンバイク(MTB)選びにおいて、多くの人が直面する壁があります。それは「海外ブランドの最新スペックが、必ずしも日本の狭い山道に合っているとは限らない」という事実です。
広大な砂漠や高速セクションが続く海外のコースとは異なり、日本のトレイルは急峻な斜面、タイトなコーナー、そして張り巡らされた木の根が特徴です。そんな「日本特有のフィールド」に真っ向から回答を出したのが、日本のブランドNESTOが放つ**TRAIZE PLUS(トレイズ プラス)**です。
今回、実際にこのバイクを手にした筆者が、なぜこのモデルが「初心者から上級者のセカンドバイクまで」幅広く支持されているのか、その理由をレビューしていきます。
TRAIZE PLUSの核心:なぜ今「27.5+(プラス)」タイヤなのか

現在のMTB市場は、転がり抵抗の低さと走破性に優れた29インチホイールが席巻しています。しかし、TRAIZE PLUSはあえて一回り小さい27.5インチ、それも「プラス」と呼ばれる通常より大幅に太いサイズを採用しました。ここには、日本の山を走り込む開発者たちの明確な意図が隠されています。
日本人の体格と「振り回しやすさ」の黄金比
29インチホイールは段差を乗り越える力に長けていますが、小柄な日本人がタイトなコーナーが連続するトレイルで扱うには、時として車輪の大きさが「慣性の強さ」となり、ハンドリングの重さに繋がることがあります。
27.5インチというサイズは、バイクを左右に倒し込む際や、急な進路変更において、直感的なコントロールを可能にします。この「自分の手足のように扱える感覚」こそが、MTB本来の楽しさである「操る悦び」に直結します。特に木々の間を縫うように走る日本のシングルトラックでは、このコンパクトな旋回性能が大きなアドバンテージとなります。
「セミファット」がもたらす圧倒的なグリップと安心感
2.8インチ幅のタイヤは、見た目の迫力だけでなく実用性が凄まじいです。一般的なMTBタイヤ(2.1〜2.3インチ程度)と比較すると、その差は歴然です。
- 接地面積の劇的な拡大:タイヤが太くなることで、路面に接する面積が横にも縦にも広がります。これにより、登り坂でペダルを強く踏み込んだ際のスリップを劇的に軽減します。初心者にとって最も高いハードルの一つである「急斜面での後輪の空転」を、タイヤの性能だけでカバーしてくれるのです。
- 低圧運用の魔法:タイヤの体積(エアボリューム)が大きいため、内部の空気量を大幅に増やせます。これにより、空気圧を1.0bar(あるいはそれ以下)付近まで下げる「低圧運用」が可能になります。低圧に設定された2.8インチタイヤは、まるで生き物のように路面の凹凸に合わせて変形します。尖った岩や湿った木の根を包み込むように捉えるため、弾かれるリスクが最小限に抑えられ、魔法の絨毯に乗っているかのような滑らかな乗り心地を提供します。この「安心感」は、路面状況を読み切れないビギナーにとって最大の味方となります。
29インチへの「拡張性」という隠れたメリット
TRAIZE PLUSのフレーム設計には、将来的なステップアップを見越した驚くべき仕掛けがあります。実はこのフレーム、29インチホイール(最大29×2.20まで)への換装も想定して設計されているのです。
「最初は圧倒的な安定感のある27.5+でトレイルの基礎技術を磨き、スピードや軽快さを求めるようになったら、後から29インチの軽量ホイールセットにカスタムする」といった、一台で性格の異なる二つのバイクを楽しめる拡張性を備えています。これは、ユーザーに長くバイクを楽しんでほしいというNESTOらしい合理的で誠実な設計思想の表れです。
パーツ構成を徹底解剖:コスパ最強を裏付ける「ガチ」な装備
定価約19万円(税込)という価格設定ながら、中身を確認すると「あとから交換する必要がない」ほど完成されています。これは、パーツをバラで購入して組んだ場合には到底到達できないコストパフォーマンスです。
SHIMANO DEORE M6100:12速が変える登坂の常識

かつては10万円台後半のバイクでは望むべくもなかった、上位グレード譲りの「フロントシングル×リア12速」ドライブトレインを搭載しています。
- 51Tの巨大ローギヤ:リアスプロケットの最大歯数は51T。これはもはやブレーキディスクと見紛うほどの巨大さです。この超ワイドレンジなギヤ比のおかげで、これまでは「降りて押す」しかなかったような激坂でも、心拍数を抑えながらシッティングのまま攻略することが可能になります。
- トラブルフリーなフロントシングル:フロントの変速機を廃したことで、チェーン脱落のリスクが激減し、ハンドル周りもスッキリと整理されています。ライダーは「右手の変速」だけに集中すれば良いため、瞬時の判断が求められるトレイル走行において、このシンプルさは大きな恩恵となります。
ドロッパーシートポスト標準装備の衝撃

「サドルの高さを走りながら手元で変えられる」――。これは現代のMTBにおいて、サスペンションと同じくらい重要な装備です。
- 下りでの圧倒的な自由度:下り坂に差し掛かった瞬間、手元のレバー一つでサドルを一番下まで下げることができます。これにより、お尻をサドルの後ろまで大きく引く「荷重移動」が容易になり、急斜面での前転リスクを劇的に減らせます。
- 街乗りや信号待ちでも恩恵:実はトレイル以外でも便利です。信号待ちでサドルを下げて両足をベタつきさせ、青信号とともにサドルを適正な高さに瞬時に戻して漕ぎ出す。この快適さを一度知ってしまうと、固定式のシートポストには二度と戻れません。
120mmトラベルの本格エアサスペンション
フロントフォークには、SR SUNTOUR製の「XCR34 BOOST」を採用しています。
- ライダーの体重に最適化:安価なコイル式サスペンションとは異なり、空気圧で硬さを調整する「エアサス」です。自分の体重や好みに合わせてミリ単位のセッティングが可能なため、小柄な方から大柄な方まで最適なクッション性を得られます。
- 34mm径インナーチューブの剛性:太めのインナーチューブを採用しているため、激しいブレーキングや荒れた路面でのコーナリングでもフロント周りがよじれません。自分が狙ったラインを正確にトレースできる剛性感は、オフロード走行での自信に直結します。
ネットのリアルな口コミ:購入者が語る「光と影」

公式スペックだけでは見えてこない、実際にフィールドで使い倒しているユーザーたちのリアルな声を抽出しました。
良い口コミ:「とにかく楽しい!」が溢れている
「29インチの他社バイクと乗り比べましたが、とにかくコーナーのヒラヒラ感が違います。日本の里山のような、狭くてクネクネした道が最高に楽しくなりました。」
「セミファットタイヤのグリップ力が反則級です。今まで怖くて足を突いていた根っこのセクションを、何事もなかったかのようにクリアできた時は感動しました。」
「この価格でドロッパーポストまで付いているのはNESTOだけ。浮いた予算でウェアやヘルメットを新調できたので、トータルでの満足度が非常に高いです。」
気になる口コミ:ここは理解しておくべきポイント
「タイヤのノブが大きく、かつ太いので、舗装路での自走はやはり『ゴー』という抵抗を感じます。トレイルまでは車で運ぶか、空気圧を少し高めにして移動するのがコツです。」
「車体重量は14kg台と、超軽量というわけではありません。しかし、下りでのどっしりとした安定感に寄与しているので、トレイルを楽しむ分には欠点には感じません。」
まとめ:TRAIZE PLUSは「未知の体験」への投資である

NESTO TRAIZE PLUSは、単なる移動手段としての自転車ではありません。週末に日常を脱ぎ捨て、泥にまみれ、自分の力で山の頂に立ち、重力に身を任せて風を切る――そんな「非日常の体験」を確実に手にするための精密なデバイスです。
銀行の定期預金で着実に資産を守ることも大切ですが、このバイクが提供してくれる「健康」や「冒険心」、そして「新しい仲間との出会い」というリターンは、どんな利回りよりも人生を豊かにしてくれるはずです。
もし、あなたが今「何か新しいことを始めたい」と胸を高鳴らせているなら、TRAIZE PLUSはその期待に120%応えてくれる相棒になります。さあ、2.8インチの太いタイヤとともに、まだ見ぬ山の奥へと踏み出してみませんか?